遺産分割協議書の銀行用と登記用の違いとは?初心者のための実務ポイント解説|北九州の行政書士が解説

「遺産分割協議書って、一度作ればどこにでも出せるものじゃないの?」

「銀行と法務局で同じ書類を出すのに、内容が違っていいの?」

相続手続きが初めての方にとって、「遺産分割協議書」は聞き慣れないうえに、提出先ごとの違いに戸惑うポイントです。

この記事では、「銀行提出用」と「不動産登記用」の違いや、実務でありがちなミスや注意点について、初心者でもわかるように丁寧に解説します。

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目次

遺産分割協議書「銀行提出用」と「登記用」の違いはある?

結論 提出先によって“求められる精度”が異なる

結論から言うと、遺産分割協議書は基本的に「銀行提出用」と「登記用」で違いはありません。

原則として「1枚に全ての相続財産をまとめて作成する」のが基本で、被相続人や相続人の記載内容が変わることはありません。ただし、財産の種類(預貯金・不動産)によって、求められる記載の正確さ・表現方法・注意点には違いがあります。

ここでは、原則ルールを踏まえつつ、銀行提出用と登記(法務局提出)用で何が違うのかを、実務に基づいて分かりやすく解説します。

銀行提出用の遺産分割協議書

■ 目的

故人名義の預金口座を相続人が解約・払い戻し、または名義変更するために使用します。

■ 銀行が重視するポイント

  • 預金に関する記載が正確であること
     → 銀行名、支店名、口座番号、名義人、預金種類が明記されている
  • 誰がその口座を取得するかが明確
  • 相続人全員の署名・実印(印鑑証明書の添付が必要)

銀行は「預金の取り扱いに必要な部分」に着目しているため、不動産の記載などはチェックしないのが特徴です。

■ 銀行提出用の注意点

  • 銀行によっては所定様式がある
  • 預金の特定方法(支店名・口座番号)に誤りがあると受付不可
  • 財産の表現が曖昧だと差し戻しになることがある

登記用(法務局提出用)の遺産分割協議書

■ 目的

故人名義の不動産(土地・建物)を相続人に名義変更するために使用します。(相続登記)

■ 法務局が重視するポイント

  • 不動産の表示を「登記簿(全部事項証明書)」どおりに記載
  • 地番・家屋番号・地目などの誤記は不可
  • 取得者を明確に記載(共有なら持分割合も必要)
  • 相続人全員の署名・実印(印鑑証明書が必要)

法務局は「国の公的記録を書き換える」という性質上、銀行よりも厳密な精度が求められます。

■ 登記用の注意点

  • 不動産の記載ミスは補正(訂正)対象
  • 住所と地番は別物(住居表示では登記できない)
  • 曖昧な表現は認められない
  • 法務局ごとに運用が微妙に異なることもある

【比較】銀行提出用と登記用の違い

項目銀行提出用登記用(法務局)
財産の記載方法銀行名・支店名・口座番号・種類登記簿どおりの地番・家屋番号など
書式基本自由(銀行指定様式あり)自由だが登記要件を満たす必要がある
提出先各銀行不動産所在地の法務局
印鑑実印+印鑑証明実印+印鑑証明
財産の範囲預貯金など幅広く記載可能不動産に限定して提出

実務で必ず押さえておくべきポイント

① 不動産は必ず登記簿謄本で確認

住民票の住所と登記の地番は違うため、住所表記は使えません。

② 相続人全員の署名・押印がないと無効

一人でも欠けると協議は成立していません。

③ 訂正・誤字があると再提出が必要

協議書は清書し、署名押印後に書き換えないことが基本です。

【Q&A】銀行用と登記用の協議書は分けたほうがいい?

■ A:原則として分けるべきではありません。

遺産分割協議書は 1通に全財産をまとめて署名押印する のが基本です。

複数の協議書を作ると…

  • 相続人の署名押印が複数枚必要
  • 内容の不一致リスクが高い
  • 紛失したときに片方だけ残りトラブルになる

といったデメリットが大きいため、通常は1枚にまとめるのが最も安全です。

【まとめ】協議書は1枚で作成し、提出先に応じて“確認されるポイント”が変わる

遺産分割協議書は本来、相続人全員の合意を1枚で示す文書です。そのうえで、提出先によって以下のように確認される箇所が変わります。

  • 銀行 → 預金部分のみを重点的に確認
  • 法務局 → 不動産の表示の正確性を厳格にチェック

つまり、作成すべき協議書は1通だけですが、その1通の中に、預貯金と不動産を“正確に記載すること”が重要になります。

もし記載内容に迷う場合や、複雑な相続が絡む場合は、行政書士や司法書士などの専門家に相談して安全に進めましょう。にも注意を払って進めていきましょう。

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