相続手続きは、故人の財産をどのように分けるかを話し合い、相続人全員の同意を得て進めていく必要があります。
しかし、現実には「一部の相続人から返事が来ない」「話し合いに応じてくれない」といったケースが少なくありません。
この記事では、そんなときにどう対処すればよいのか、法律の知識がない方でも理解できるよう、分かりやすく解説します。
1. 相続手続きの基本 相続人全員の同意が必要
相続が発生すると、次のような手続きを進めることになります。
- 銀行口座の解約や名義変更
- 不動産の名義変更(相続登記)
- 遺産分割協議書の作成
- 税務署への相続税申告(該当する場合)
これらの手続きの多くでは、相続人全員の署名や印鑑(実印)が必要です。
つまり、一人でも協力しない相続人がいれば、相続手続きが進められないということです。
2. なぜ返信がないのか?考えられる理由
返信がない相続人がいる場合、原因は様々です。以下のような理由が考えられます。
ケース | 内容 |
---|---|
連絡先が不明 | 住所や電話番号がわからない、連絡が取れない |
無関心・放置 | 忙しい、相続に関心がない |
敵対的な関係 | 他の相続人との確執がある |
相続放棄を検討中 | 自分の取り分がない、借金の懸念がある |
精神的・身体的事情 | 高齢や病気により判断が困難 |
3. 対処法① まずは丁寧に連絡を取る
最初にすべきことは、できる限り誠意をもって連絡をとることです。
電話や手紙、LINEなどのSNSでも構いません。
ポイントは「感情的にならず、丁寧に事情を説明すること」です。
それでも返事がない場合は、以下のような方法で証拠を残しましょう。
内容証明郵便を送る
内容証明郵便は「いつ」「誰に」「どんな内容を送ったか」が記録に残る手紙です。
相続の協議参加を正式に依頼するために有効です。
○○様
このたび△△(被相続人)が亡くなり、相続手続きを進める必要があります。
つきましては、遺産分割協議へのご協力をお願い申し上げます。
ご多忙かと存じますが、○月○日までにご連絡いただけますと幸いです。
4. 対処法② 家庭裁判所への申し立て(調停)
どうしても連絡が取れない、あるいは相続人が協議に応じない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。
遺産分割調停とは?
家庭裁判所で第三者(調停委員)が間に入り、公平な立場で話し合いを進める制度です。
本人同士では感情的になりがちな相続の話し合いを、法律に沿って進めてもらえます。
相続手続きの進め方と対処フロー

5. 対処法③ 行方不明・所在不明の相続人がいる場合
連絡が取れない相続人が、実際にどこに住んでいるのか分からないケースもあります。
この場合は、法的手続きを利用して対応します。
不在者財産管理人の選任
家庭裁判所に申し立てを行い、「不在者財産管理人」という代理人を立てることができます。
この代理人が、行方不明の相続人の代わりに協議に参加します。
失踪宣告(7年以上生死不明の場合)
相続人が7年以上行方不明であれば、「失踪宣告」を申請することで、死亡したものとみなされ、手続きが進められます。
6. 相続放棄しているかどうかを確認する方法
相続人がすでに相続放棄している可能性があるなら、家庭裁判所に確認することもできます。
- 調査対象者が放棄の申述をしていれば、利害関係人(たとえば他の相続人)は、家庭裁判所で照会できます。
- これにより、手続きに参加させる必要があるかどうかを判断できます。
7. 弁護士や専門家の活用も視野に
相続トラブルは感情が絡むうえ、法律手続きが複雑です。
困ったときは、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。
- 相続調停の書類作成を代行してくれる
- 法的手続きの見通しを説明してくれる
- 交渉の代理をしてくれる
費用はかかりますが、手続きの遅延や精神的なストレスを軽減できる点で非常に有効です。
まとめ 焦らず、段階的に進めましょう
共同相続人の中に返信がない人がいても、相続手続きをあきらめる必要はありません。
大切なのは、段階を踏んで粘り強く進めることです。
- まずは誠実な連絡を心がける
- 返答がない場合は、証拠を残す(内容証明)
- どうしても難しい場合は、家庭裁判所の手続きを利用する
これらの流れを押さえれば、問題の解決に近づくことができます。