はじめに|「特に対策はいらないと思っていました」
相続のご相談を受けていると、多くのご家庭で、こんな言葉を耳にします。
「財産も多くないので、特に相続対策はしていませんでした」
「家族仲も良いので、揉めることはないと思っていました」
確かに、生前は何の問題もなかったかもしれません。
しかし相続が始まると、「何も決まっていないこと」そのものが問題になるケースは少なくありません。
では、相続対策をしていなかった場合、具体的に誰が、どんな場面で困るのでしょうか。
この記事では、相続対策を何もしなかったご家庭で実際によく見られるケースをもとに、
- 誰が一番負担を抱えるのか
- どのタイミングで問題が表面化するのか
- なぜ「何も決めていなかったこと」が大きな悩みになるのか
を、実務の視点から分かりやすくご紹介します。
「うちも当てはまるかもしれない」
そう感じた方が、今後の判断を考える材料としていただける内容です。
結論|一番困るのは「亡くなった本人」ではなく、残された家族です
最初に結論からお伝えします。
相続対策を何もしなかったことで、一番困るのは、亡くなったご本人ではありません。
実際に困るのは、
- 配偶者
- 子ども
- 相続手続きを任された家族
といった、残された側の人たちです。
相続対策をしていなかったことによる負担は、すべて生きている家族が引き受けることになります。
困る人①|配偶者(特に高齢の方)
まず大きな負担を抱えるのが、配偶者です。
- 自宅の名義はどうなるのか
- 住み続けていいのか
- 手続きは誰が進めるのか
こうした判断を、精神的に一番つらい時期に迫られます。
さらに、遺言がない場合は、
- 自宅が共有名義になる
- 売却や名義変更に子どもの同意が必要になる
など、「住んでいるのに、自由に決められない立場」になってしまうこともあります。
困る人②|手続きを任された子ども
次に困るのが、「代表して手続きを進めることになった子ども」です。
- 戸籍の収集
- 銀行・不動産の手続き
- 相続人全員への説明・調整
これらを進めながら、
「自分が勝手に決めていいのか」
「他の兄弟にどう思われるだろうか」
と、常に気を遣い続けることになります。
遺言がない場合、判断の根拠が何もない状態で動かなければならないという精神的負担は、想像以上に大きいものです。
困る人③|「家族関係そのもの」
相続対策をしていなかった家庭では、手続きだけでなく、家族関係にも影響が出ることがあります。
- 誰がどれくらい相続するのか
- 自宅をどうするのか
- 負担や役割の偏り
こうした話題は、誰かの価値観や不満を刺激しやすいためです。
もともと仲の良かった家族でも、
「こんなことで揉めるとは思わなかった」
という状態になってしまうことも、決して珍しくありません。
なぜ「何もしていない」ことが問題になるのか
相続対策をしていなかった場合、
- 誰が
- 何を
- どのように
決めるのかが、すべて相続人任せになります。
これは言い換えると、家族に「決断の責任」を丸投げしてしまう状態です。
特に、
- 自宅しか財産がない
- 現金が少ない
- 相続人が複数いる
といった家庭ほど、判断が難しくなりやすい傾向があります。
相続対策として何かした方がいいと感じても、「生前贈与をした方がいいのか、しない方がいいのか」で迷われる方も多くいらっしゃいます。
生前贈与と相続の考え方の違いについては、こちらの記事で詳しく整理しています。
もし遺言があったら、何が違ったのか?
遺言があれば、
- 分け方の基準が明確になる
- 誰かが責任を負わなくて済む
- 家族が「迷わなくていい」
という大きな違いがあります。
遺言は、財産を渡すための書類であると同時に、家族の負担を減らすためのものでもあります。
相続対策は「揉める家族」のためではない
よくある誤解ですが、
相続対策や遺言は、
- 家族仲が悪い
- 財産が多い
家庭だけのものではありません。
むしろ実務では、
「仲が良いからこそ、何も決めていなかった」
という家庭ほど、相続の場面で苦労するケースが目立ちます。
まとめ|相続対策をしなかった影響は、必ず家族に返ってくる
相続対策を何もしなかった場合、
- 困るのは配偶者
- 悩むのは子ども
- 影響を受けるのは家族関係
という形で、その影響はすべて残された家族に返ってきます。
だからこそ、
「自分がいなくなった後、家族が迷わないか」
という視点で考えることが大切です。
相続対策として、まず検討したいのが「遺言」です
相続対策にはさまざまな方法がありますが、多くの家庭にとって、最初の一歩として現実的なのが遺言の作成です。
遺言があるだけで、
- 判断基準が明確になる
- 手続きがスムーズになる
- 家族の心理的負担が減る
という効果があります。
相続対策を「まだ早い」と感じている方へ
「まだ元気だから」
「そのうち考えよう」
そう思っている間に、相続対策のタイミングを逃してしまう方も少なくありません。
何もしないこと自体が、家族にとってのリスクになる。この記事が、そう気づくきっかけになれば幸いです。


