はじめに
北九州市で相続手続きを進める中で、「借金があるか分からない」というご相談を多くいただきます。
ご家族が亡くなられた後、相続手続きを進める中で、預貯金や不動産などの“プラスの財産”だけでなく、借入れやローン、クレジット契約などの“マイナスの財産”の有無も確認しなければなりません。
相続では、財産だけでなく負債も引き継ぐ可能性があるため、負債調査は非常に重要です。
特に、被相続人が生前に消費者金融、クレジット会社、信販会社、保証会社、リース会社、金融機関などと取引していた可能性がある場合には、JICC(株式会社日本信用情報機構)への相続開示請求が有力な調査方法になります。
JICCは指定信用情報機関であり、加盟会員である消費者金融会社、クレジット会社、金融機関等におけるローンやクレジットの契約内容、返済状況などの信用情報を確認できる仕組みを提供しています。
本記事では、JICCの相続開示請求について、手続きの流れ、必要書類、注意点、実務上のポイントまで詳しく解説します。
1 JICCの相続開示請求とは何か
JICCの相続開示請求とは、亡くなった方について、相続人等がJICCに登録されている信用情報の開示を求める手続きです。
これにより、被相続人に消費者金融やクレジット契約、ローン契約、保証契約等の情報が登録されていないかを確認することができます。
JICCの加盟会員の業態は、消費者金融会社、流通系・銀行系・メーカー系クレジット会社、信販会社、金融機関、保証会社、リース会社などと公表されています。
相続では、被相続人に借金があるか分からないまま遺産分割や解約・払戻しの手続きを進めてしまうと、後で負債が見つかって困ることがあります。
そのため、相続放棄を検討するケースはもちろん、相続放棄までは考えていないケースでも、まずは事実確認として負債調査を行うことが大切です。
ただし、JICCで確認できるのはJICCに加盟する会員会社に関する信用情報です。
したがって、相続における負債調査は、JICCだけで完結するとは限らず、他の調査とあわせて進める視点も重要です。
これはJICCの開示結果に他機関の信用情報がそのまま全て含まれるわけではないこととも関係します。
2 誰が申込みできるのか
JICCでは、亡くなられた方の信用情報は、法定相続人または二親等以内の血族の方等が郵送手続きにより申し込みできると案内されています。
したがって、典型的には次のような方が対象になります。
- 配偶者
- 子
- 父母
- その他、法定相続人
- 二親等以内の血族にあたる方等
相続実務では、まず誰が申込人になるのかを決めることが重要です。
相続人が複数いる場合でも、申込手続き自体は一人が代表して進めることが多いですが、その方が法定相続人等であることを戸籍や法定相続情報一覧図で示せることが必要になります。
3 JICCの相続開示請求は郵送で行う
JICCの案内上、亡くなった方に関する開示申込みは郵送による手続きです。
さらに、来社窓口による開示等のサービスは2024年10月31日をもって終了しています。したがって、現在の相続開示請求は、実務上郵送で準備して送ることが前提になります。
また、書類送付先については、JICCが2025年2月に変更を公表しており、変更後の送付先は下記のとおりです。
送付先は変更される可能性もあるため、発送前に公式案内の再確認が安全です。
4 必要書類

JICCの公式サイトでは、亡くなられた方(父・母・配偶者・子)の開示手続きに必要な書類として、主に次のものが示されています。
(1)信用情報開示申込書
必要なのは、「信用情報開示申込書(ご本人が亡くなられている場合)」です。
JICCでは申込書作成フォームから作成できるほか、手書き用の様式も案内されています。コンビニエンスストアで印刷できる案内もあります。
(2)法定相続人等であることがわかる書類
代表例は次のとおりです。
- 法定相続情報一覧図
- 戸籍謄本(または抄本)等
JICCは、亡くなられた方の法定相続人等であることが分かる書類として、戸籍謄本(または抄本)等、発行日から3か月以内の原本の送付を案内しています。
実務上は、法定相続情報一覧図があると整理しやすいです。
もっとも、一覧図だけで足りるのか、戸籍の追加提出が必要かは個別事情にも左右されるため、申込内容に応じて公式案内を確認すると安心です。
(3)相続人本人の本人確認書類2点
JICCでは、手続きする法定相続人等の本人確認書類2点が必要です。(現住所が確認できる原本+「氏名」・「生年月日」の記載がある面のコピー)
本人確認書類の例として、印鑑証明書や住民票の写し、運転免許証または運転経歴証明書、パスポート、在留カードまたは特別永住者証明書、マイナンバーカード等が案内されています。
本人確認書類を提出する際は、本籍地、個人番号、健康保険の資格確認書の記号・番号・保険者番号・QRコードなどは塗りつぶして送る必要がある旨も案内されています。
(4)手数料
亡くなられた方(父・母・配偶者・子)の開示手続きは、手数料2,177円と案内されています。
手数料は「郵送開示利用券」をコンビニエンスストアで購入して準備する方式です。
なお、一般の郵送開示利用券には「本人限定」「本人限定+速達」の券種があり、本人申込みでは速達希望時の購入金額が2,511円と案内されています。
料金や券種は改定されることがあるため、申込時点の公式案内を確認してください。
5 手続きの流れ
Step1 相続人を確定する
まずは戸籍を確認し、誰が法定相続人になるのかを整理します。
JICCへの申込みでは、申込人が法定相続人等であることを示す必要があるため、ここが出発点です。
法定相続情報一覧図が取得済みであれば、以後の実務がかなり整理しやすくなります。
Step2 必要書類を集める
申込書、戸籍関係書類、本人確認書類2点、手数料を準備します。
特に戸籍は、発行日から3か月以内のものが求められるため、古い戸籍をそのまま使えない点に注意が必要です。
Step3 申込書を作成する
JICCの申込書作成フォームを利用するか、手書き用様式を印刷して記入します。
申込内容に誤りがあると、登録情報と一致せず開示されないことがあるため、氏名、生年月日、住所・電話番号などは慎重に確認します。
JICCは、申込時に申告した氏名・生年月日と、郵便番号、電話番号又は本人確認書類番号のいずれか一つが一致した情報が開示対象と案内しています。
Step4 郵送で送る
必要書類一式をそろえて、JICC開示窓口へ郵送します。
送付書類は返却されないため、原本提出が必要なもの以外は、どの書類を送ったか手元控えを残しておくのが実務上おすすめです。JICCも、提出書類は返却できないと案内しています。
Step5 開示結果を受け取る
開示結果は本人限定受取郵便(特例型)で送られます。
したがって、普通郵便のように家族が受け取ればよいものではなく、受取方法に注意が必要です。
6 注意点
注意点1 JICCだけで負債調査が完結するとは限らない
JICCで分かるのは、JICC加盟会員に関する信用情報です。
そのため、銀行系、クレジット系、その他の債務も含めて漏れなく確認したい場合は、他の信用情報機関や資料調査、不動産調査、郵便物確認なども視野に入れる必要があります。
JICC自体も、開示結果に他機関の信用情報がそのまま含まれるわけではないことを示しています。
注意点2 情報が一致しないと開示されないことがある
JICCでは、申込書に記載した情報と登録情報が一致しない場合、開示されないことがあります。
特に相続では、被相続人の旧住所、旧電話番号、旧姓、以前の勤務先に紐づく契約などが問題になることがあります。
JICCは、変更連絡がされていない場合、以前の住所や電話番号が登録されていることがあると案内しています。
つまり、相続人が把握している現在情報だけでは足りず、生前の住所歴や電話番号、旧姓情報なども丁寧に整理しておくことが重要です。
注意点3 書類不備・受取不備で時間を失いやすい
戸籍が古い、本人確認書類のコピーが不鮮明、必要事項が欠けている、手数料の準備方法を誤る、といった不備があると、そのぶん調査が遅れます。
JICCは、申込みはキャンセルできず、提出書類は返却できないとしています。
さらに、開示結果は本人限定受取郵便で届くため、受取り側の準備不足でもタイムロスが生じます。相続放棄を検討している事案では、調査の出遅れが致命的になることもあるため、早めの着手が大切です。
注意点4 送付先や運用は改定されることがある
JICCは2025年に書類送付先変更を公表しており、また2025年10月には利用料金改定や郵送による開示申込の必要書類・郵送方法の変更についても重要なお知らせを出しています。
したがって、記事やネット情報を見てそのまま進めるのではなく、申込直前に必ず最新の公式ページを確認することが重要です。
7 相続実務でJICC開示を活かすポイント
JICCの相続開示請求は、単に「借金があるかないか」を確認するだけではありません。
もし登録情報から契約先が判明すれば、そこからさらに残高照会、契約内容確認、引落口座の調査、関連する書類収集へと進める足がかりになります。
また、相続人の立場からすると、最も不安なのは「何があるか分からない」状態です。
預貯金や不動産は見つけやすくても、借入れや保証債務、キャッシング枠の利用は、通帳や郵便物だけでは把握しきれないことがあります。そうした見えにくい負債を整理する第一歩として、JICC開示は非常に有効です。
まとめ
JICCの相続開示請求は、亡くなられた方の負債調査を進めるうえで重要な手続きです。
法定相続人または二親等以内の血族の方等が、郵送により申込みを行い、必要書類としては申込書、相続関係を示す書類、本人確認書類2点、手数料が必要になります。
開示結果は本人限定受取郵便で届くため、書類準備だけでなく受取りまで見据えて進めることが大切です。
相続では、プラスの財産だけを見て動くのは危険です。
負債の有無を確認しないまま進めると、後から想定外の債務が判明することもあります。だからこそ、相続開始後はできるだけ早い段階で、丁寧に負債調査を行うことが重要です。
北九州エリアで負債の相続調査でお困りなら
被相続人に借入れやローンがあるか分からず、不安を感じていませんか。
JICCの開示請求は有効な調査手段ですが、戸籍収集、法定相続情報一覧図の取得、必要書類の見極め、他の信用情報機関とのあわせ調査まで含めると、一般の方には負担が大きい手続きです。
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