はじめに|「長年一緒に暮らしていたのに相続できない?」
近年、法律婚をしていない“内縁関係”の夫婦は珍しくありません。
しかし、相続が発生したとき、
「長年連れ添ってきたのに、相続できないのですか?」
というご相談を受けることがあります。
結論から言うと、内縁の配偶者には原則として法定相続権はありません。
ここに、大きな誤解とトラブルの種があります。
この記事では、
- 内縁配偶者の法的立場
- 相続が発生したときに起こる問題
- 自宅に住み続けている場合のリスク
- 現実的な対処法
を整理します。
内縁配偶者に相続権はあるのか?
民法では、法定相続人は
- 配偶者(法律婚)
- 子
- 直系尊属
- 兄弟姉妹
ここでいう「配偶者」は、法律上の婚姻関係にある者を指します。
したがって、内縁配偶者は法定相続人にはなりません。
たとえ何十年同居していても、戸籍上の婚姻がなければ相続権はないのです。
よくあるトラブル①|自宅に住み続けている場合
最も多いのが、
- 被相続人名義の自宅に内縁配偶者が住み続けているケースです。
しかし、法的にはその不動産は法定相続人の共有財産になります。
相続人(子など)が
- 明渡し請求
- 売却要求
をすれば、内縁配偶者は弱い立場になります。
長年住んでいたからといって、自動的に所有権は得られません。
よくあるトラブル②|預金の引き出し
内縁配偶者が生活費として口座を管理していた場合、
死亡後に口座を引き出すと
- 不当利得
- 使途不明金
として問題になる可能性があります。
たとえ生活を共にしていても、法律上は別人格です。
内縁配偶者を守る方法はあるのか?
① 遺言書
最も確実なのは遺言です。
遺言で「内縁の妻○○に自宅を相続させる」と記載すれば、財産を承継できます。
ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人がいる場合は遺留分(民法1042条)が問題になります。
完全に排除はできません。
② 死因贈与契約
死因贈与契約とは、「亡くなったときにこの財産を渡す」と生前に契約しておく方法です。遺言と違い、当事者双方の合意で成立します。
内縁配偶者に自宅などを残したい場合に有効ですが、遺留分の問題や相続人との対立が生じる可能性があります。そのため、
- 対象財産を明確に特定する
- 契約内容を文書化する(可能なら公正証書)
- 登記や手続きの段取りまで設計する
といった“証拠と実行性の確保”が重要です。
契約書があるだけで安心するのではなく、実際に実現できる形で整えることがポイントになります。
③ 特別縁故者の制度
相続人がいない場合に限り、家庭裁判所の審判で財産の分与を受けられる制度があります(民法958条の2)
しかし、
- 相続人がいないこと
- 特別な関係があること
が必要です。子がいる場合などは使えません。
相続人側の立場も理解する
相続人から見れば、
- 法律上の配偶者ではない
- 相続権がない
という事実があります。
しかし一方で、
- 長年生活を共にしてきた
- 介護を担っていた
という事情もあります。感情と法律が衝突しやすい場面です。
放置が最も危険
内縁配偶者が住み続けているからといって、何も整理しないままにすると、
- 共有状態の固定化
- 次の相続でさらに複雑化
- 感情対立の激化
につながります。
早期に
- 権利関係の整理
- 協議の実施
- 書面化
をすることが重要です。
現実的な解決策
① 協議による分与
相続人全員が合意すれば、内縁配偶者に財産を渡すことは可能です。
これは“相続”ではなく、相続人からの贈与という形になります。
② 使用貸借の整理
すぐに所有権を移せない場合、
- 無償で住み続ける合意
- 期限の設定
などを書面化するだけでもトラブル防止になります。
まとめ|内縁配偶者には自動的な権利はない
- 内縁配偶者に法定相続権はない
- 遺言がないと原則取得できない
- 自宅問題が最大の争点になりやすい
- 早期整理が重要
法律上の扱いと、生活実態とのギャップが最も大きいテーマです。
だからこそ、感情ではなく、設計で進める必要があります。
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