はじめに|相続は「話し合い」が整わないと進まない
相続手続きは、戸籍を集め、財産を調査し、書類を作れば終わる。
そう思われがちですが、実務上もっとも止まりやすいのは「相続人全員の署名・実印が揃わない」という場面です。
民法第907条は、遺産分割は「共同相続人の協議」によって行うと定めています。
つまり、原則として相続人全員の合意が必要です。
さらに、銀行口座の解約や不動産の名義変更では、
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の署名押印
- 印鑑証明書
が求められます。
誰か一人でも協力が得られないと、手続きは止まります。
では、どうすればよいのでしょうか。
この記事では、実務に基づく「現実的な落としどころ」を5つご紹介します。
落としどころ①|まずは“感情”ではなく“事実”を整理する
署名が集まらない原因の多くは、
- 財産の全体像が共有されていない
- 使途や管理方法が不透明
- 誰かが主導していることへの不信感
にあります。
そこで最初にやるべきことは、
- 相続人の確定(戸籍収集)
- 財産目録の作成
- 借金・保証の有無の確認
です。
事実関係を整理し、「何がいくらあるのか」を透明化することで、不信感は大きく下がります。
※行政書士は戸籍収集や財産目録作成をサポートできます。
落としどころ②|郵送型合意設計(遠方・多忙対応)
実務上よくあるのが、
- 相続人が遠方に住んでいる
- 忙しくて集まれない
- 面談を拒否している
というケースです。
この場合、郵送による協議設計が有効です。
流れは次の通りです。
- 財産目録と協議案を作成
- 説明文書を添付
- レターパック等で送付
- 署名押印済み書類を返送してもらう
ここで重要なのは、
- 一度にすべてを求めない
- 期限を明確にする
- 記載例を同封する
という設計です。
実務では、説明不足が原因で差し戻しが発生します。
落としどころ③|委任状の活用(実務代理の整理)
相続人本人が動けない場合、委任状による手続き代理という方法があります。
例えば、
- 銀行窓口での手続き
- 書類受領
- 証明書取得
などは、委任状があれば可能です。
ただし注意点があります。
- 遺産分割協議そのものの決定権は原則本人
- 包括的な代理には限界がある
- 利益相反に注意
委任状は万能ではありませんが、実務を進める潤滑油にはなります。
落としどころ④|部分的合意という選択
すべての財産を一度に決めようとすると、対立が激化します。
実務では、
- 預金だけ先に分ける
- 不動産は後日協議
- 葬儀費用のみ精算
という段階的処理も有効です。
民法上、遺産分割は一括である必要はありません。
まず合意できる部分から進めることで、心理的ハードルが下がります。
落としどころ⑤|家庭裁判所の調停を視野に入れる
どうしても合意できない場合、最終手段は家庭裁判所の遺産分割調停です(民法907条2項)。
調停は、
- 第三者(調停委員)が間に入る
- 法的枠組みに沿って進む
- 感情論を整理しやすい
という特徴があります。
ただし、
- 時間がかかる
- 費用が発生する
- 関係性が悪化する可能性
もあります。
そのため、調停は「失敗」ではなく、選択肢の一つとして冷静に判断することが重要です。
行政書士ができること・できないこと
行政書士は、
- 戸籍収集
- 財産調査補助
- 遺産分割協議書作成
- 書類設計
を行えます。
一方で、
- 相続人間の代理交渉
- 法律紛争の代理
は行えません。
そのため、あくまで合意形成の“設計支援” が役割となります。
まとめ|署名が集まらないときこそ「設計」が重要
相続人の署名が集まらないとき、感情で動くと長期化します。
重要なのは、
- 事実の整理
- 郵送設計
- 委任活用
- 段階処理
- 調停の視野
という冷静な設計です。
相続は法律問題であると同時に、家族の問題です。
だからこそ、「どう進めるか」を誤らないことが、最終的な円満解決につながります。
▶ 署名が集まらずお困りの方へ
- 相続人と連絡が取れない
- 何度送っても書類が戻らない
- 協議案をどう作ればいいか分からない
このような状況でも、整理の仕方を変えることで前に進むケースは多くあります。
行政書士74事務所では、相続人全体を見渡した「手続き設計」のサポートを行っています。
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