大切なご家族が亡くなり、相続手続きを進めようとしているものの、
「誰が相続人になるのか分からない」
「何から始めればいいのか分からない」
と悩んでいませんか?
相続手続きでは、まず「相続人の範囲」を正しく確定することが重要です。
ここを間違えると、手続きがやり直しになることもあります。
この記事では、相続専門の行政書士が、相続人の範囲の決め方を図を使って分かりやすく解説します。
初めて相続を経験する方でも理解できる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
※この記事を読むことで、相続人の範囲で迷うことがなくなり、相続手続きを安心して進められるようになります。
なぜこの記事を書いたのか(行政書士としての実体験)
相続は、知識がないから難しいのではありません。
「何から始めればいいのか分からない」ことが、一番の不安だと私は感じています。
私自身、行政書士として相続の勉強をしてきましたが、初めて相続の実務に携わったときは、正直戸惑いました。
法律用語は理解できても、「なぜこの書類が必要なのか」「この順番で進める理由は何なのか」といった実務の部分がすぐには結びつかなかったのです。
特に、相続人の範囲を正しく把握できていないと、
・後から相続人が判明して手続きをやり直す
・関係のない方にまで連絡してしまう
といったことが、実際の現場では少なくありません。
こうした状況を何度も目にする中で、「最初に相続人の範囲を正しく決めることが、相続手続きをスムーズに進める最大のポイントだ」と強く感じるようになりました。
この記事は、相続の知識がない方でも、
「自分の場合、誰が相続人になるのか」
「どこまで確認すればいいのか」
を迷わず判断できるようにするために書いています。
相続手続きで余計な負担を背負わず、安心して次の一歩を踏み出していただくために、ぜひこの先も読み進めてみてください。
相続手続きをしないといけない3つの理由

大切なご家族を亡くし、深い悲しみの中にいる間にも、相続手続きの期限は刻一刻と迫ってきます。
相続には多くの手続きがあり、心身ともに負担を感じる方も少なくありません。
「相続手続きには期限がないから、しばらく放っておいても問題ない」
そのような話を耳にしたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、結論からお伝えすると、その考え方は誤りです。
相続手続きは、放置してしまうと後から大きな不利益につながることがあります。
そのため、相続が発生したら、できるだけ早めに全体像を把握し、必要な手続きを進めることが重要です。
相続手続きを進めなければならない理由は、主に次の3つがあります。
- 10ヶ月以内に相続税の申告が必要
- 権利関係が複雑になる恐れ
- 相続放棄は3ヶ月以内の申述が必要
次章では、これら3つの理由について、順にわかりやすく解説していきます。
①10ヶ月以内に相続税の申告が必要
相続手続きを進めなければならない理由の一つ目は、相続税の申告期限が、相続開始を知った日の翌日から10か月以内と法律で定められているためです。
確かに、相続手続きそのものには明確な期限が設けられていません。
しかし、相続税の申告には期限があり、相続財産や相続人の状況を把握していなければ、正しい申告を行うことができません。
相続手続きを進めないまま申告期限を過ぎてしまうと、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される可能性があります。
こうした不利益を避けるためにも、相続財産や相続人をきちんと調査し、期限内に相続税の申告ができるよう、早めに相続手続きを進めることが大切です。
②権利関係が複雑になる恐れ
相続手続きを進めないまま放置してしまうと、相続人や権利関係が複雑になってしまうという大きなリスクがあります。
たとえば、最初の相続手続きを行わないまま時間が経ち、相続人のうちの一人が亡くなってしまった場合を考えてみてください。
この場合、亡くなった相続人の配偶者や子どもなどが新たな相続人となり、最初に亡くなった方の相続分を引き継ぐことになります。
つまり、一次相続の相続人に加えて、二次相続の相続人も関わることになり、当初よりも相続人の人数が増えてしまうのです。
相続人が増えると、
・全員分の戸籍などの公的書類を集める必要がある
・全員の同意を得なければ手続きが進まない
・意見の違いが生じやすくなる
といった理由から、相続手続きは一気に複雑になります。
さらに、相続人同士で意見が対立してしまうと、話し合いが進まず、手続きが長期化するケースも少なくありません。
このような事態を避けるためにも、相続が発生したら、できるだけ早めに相続手続きを進め、完了させることが重要です。
③相続放棄は3ヶ月以内の申述が必要
相続放棄は、いつでもできるわけではありません。
相続開始を知った日から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければ、相続放棄は原則認められません。
期限を過ぎてしまうと、多額の借金があった場合でも、自動的に相続したものとして扱われる可能性があります。
「知らなかった」「まだ調べていなかった」では済まされないのが相続手続きです。
だからこそ、相続が発生したら放置せず、早めに全体像を把握することが重要です。
基礎調査の手続き(基礎知識)

被相続人が亡くなられた場合、相続手続きを進めるにあたって、まず次の2つを確定させる必要があります。
1つ目が 相続人の範囲、2つ目が 相続財産の範囲とその評価 です。この2つをあわせて、基礎調査といいます。
この基礎調査は、相続人ご自身が手続きを行う場合でも、行政書士や税理士などの専門家に依頼する場合でも、必ず行わなければならない重要な手続きです。
相続人と相続財産の内容が確定していなければ、遺産分割の話し合いも、銀行や不動産の名義変更も進めることができません。
そのため、相続手続きの最初のステップとして、この基礎調査から着手することが大切です。
なお、相続財産の範囲や評価方法(残高証明書の取得方法など)について詳しく知りたい方は、【② 相続財産の範囲と評価の方法】をご覧ください。
この記事では、① 相続人の範囲を確定させる手続きについて、私の地元である 山口県下関市 を例に、具体的に解説していきます。
基本的な手続きの流れや考え方は、どの市町村役場でも共通しています。
そのため、下関市の部分をお住まいの市町村に置き換えていただければ、他の地域でも同様に手続きを進めることができます。
ただし、必要書類や窓口の対応が市町村ごとに異なる場合もありますので、実際に手続きを行う前には、市役所の担当部署へ事前に確認することをおすすめします。
相続人とは?
「相続人の範囲は、どのように決めるのだろう?」
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
まず、相続人とは何かについて整理しておきましょう。
相続人とは、被相続人が亡くなったことにより、その遺産を引き継ぐ人のことをいいます。具体的には、故人が残した財産や権利・義務を承継する立場の人を指します。
そして、相続人の中でも、民法によって相続する権利が定められている人を「法定相続人」といいます。
この法定相続人には、あらかじめ順位が定められており、順位の高い人が優先して相続人となる仕組みになっています。
誰が相続人になるのかは、この順位に従って判断されます。
次の章では、法定相続人の順位と範囲について、具体例を交えながら分かりやすく解説していきます。
法定相続人の順位

- 常に相続人となる人 → 配偶者
- 第一順位 → 子(直系婢族)
- 第二順位 → 親(直系尊族)
- 第三順位 → 兄弟姉妹
第900条同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
民法900条-Wikibooks
- 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。
- 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。
- 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。
- 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。
被相続人の配偶者は、常に相続人となります。
これは、配偶者が被相続人と生活を共にし、家計や家庭の維持などにおいて長年にわたり貢献してきた存在であると法律上評価されているためです。
また、法定相続人には順位が定められており、先順位の相続人がいる場合には、後順位の相続人は相続人になることができません。
たとえば、被相続人に
- 妻
- 子
- 父
がいる場合を考えてみましょう。
このケースでは、常に相続人となる配偶者(妻)と、第1順位の法定相続人である子が相続人となります。
一方で、父は第2順位の法定相続人にあたるため、第1順位である子がいる以上、相続人にはなりません。
このように、相続人の範囲は「配偶者の有無」と「法定相続人の順位」によって決まります。
相続人を確定させる為の手続きの流れ

被相続人の本籍地を確認するために住民票を取得します。
※確認できている場合は不要です。
住民票で確認した本籍地の市区町村役場に戸籍の請求をします。
出生してから死亡するまでの連続した戸籍謄本を取集します。
まず最初に行うのが、被相続人が「出生してから死亡するまで」の戸籍謄本等を取得する手続きです。
戸籍謄本等は、被相続人の本籍地がある市区町村役場に請求します。ただし、本籍地が分からない場合も少なくありません。
そのような場合は、被相続人の最後の住所地の市区町村役場に対して、「本籍地が記載された住民票の写し」を請求し、本籍地を確認します。
ここでいう「最後の住所地」とは、被相続人が亡くなった時点で住民票を置いていた住所地のことを指します。
被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得する理由は、戸籍には、その方の身分関係がすべて記載されているためです。
戸籍を確認することで、誰が相続人になるのかを正確に確定することができます。
なお、戸籍は
- 婚姻
- 転籍
- 養子縁組
- 法改正
などの事由があるたびに新しく作られます。
そのため、新しい戸籍には、過去の戸籍の内容がすべて記載されているわけではありません。
このような理由から、被相続人の出生から死亡まで連続したすべての戸籍を取得することで、相続人の範囲を確実に証明することができます。
戸籍謄本等は、市区町村役場の窓口で直接請求するのが最も早い方法ですが、平日に役所へ出向くことが難しい方も多いでしょう。
そこで、次に郵送による戸籍謄本等の請求方法について、分かりやすくご紹介します。
住民票の写しの取得(郵送請求)
郵送請求の手順
※本籍地の確認が取れている場合は次章の『戸籍謄本の取得』よりご覧下さい。
- 郵送請求のための140円切手を4枚購入します。(住民票請求時貼付用2枚と戸籍謄本等請求時貼付用2枚)
- 定額小為替1000円×3枚(3000円分)または普通為替3000円分
※定額小為替は3000円分で足りると思いますが、市町村役場で手数料が異なるため不安な方は電話等で問い合わせてご確認して購入、請求して下さい。
亡くなった方の最後の住所地の市区町村役場のホームページから住民票の写し等郵便請求書のPDFファイルをダウンロードして印刷します。(下記にも準備しています。)
相続人以外が請求する際は委任状のPDFファイルもダウンロードして印刷する。
印刷した住民票の写し等郵便請求書に下記の記載例のように記入します。

【委任状】

本人確認書類とは、運転免許証・旅券・マイナンバーカード・写真付きの住民基本台帳カード・国民健康保険被保険者証・後期高齢者医療被保険者証などです。
定形型封筒の表面に自分(請求手続きを行う方)の住所・氏名を記載して、①で購入した140円切手を貼る。裏面は無記入でよい。
定形型封筒の表面に請求する市町村役場の住所、市町村役場名、担当課を記入して、①で購入した残りの140円切手を貼る。裏面に自分(請求手続きを行う方)の住所、氏名を記入する。

【郵送する提出書類】
- 定額小為替1000円×1枚(残りの1000円×2は戸籍謄本等請求時に使用します)
- 住民票の写し等郵請求書 + 委任状(代理される方のみ)
- 本人確認書類のコピー
- 返信用封筒

1〜2週間前後で市町村役場から住民票の写しと定額小為替のお釣りが郵送される。
戸籍謄本の取得
郵送請求の手順
140円切手を2枚購入します。(※住民票の請求時に4枚購入した方は除く)
- 定額小為替1000円×3枚(3000円分)または普通為替3000円分
※定額小為替は3000円分で足りると思いますが、市町村役場で手数料が異なるため不安な方は電話等で問い合わせてご確認して購入、請求して下さい。(※住民票の請求時に購入した方は除く)
亡くなった方の最後の住所地の市区町村役場のホームページから戸籍証明書等郵便請求書のPDFファイルをダウンロードして印刷します。(下記にも準備しています。)
相続人以外が請求する際は委任状のPDFファイルもダウンロードして印刷する。
印刷した戸籍証明書等郵便請求書に下記の記載例のように記入します。

【委任状】

本人確認書類とは、運転免許証・旅券・マイナンバーカード・写真付きの住民基本台帳カード・国民健康保険被保険者証・後期高齢者医療被保険者証などです。
定形型封筒の表面に自分(請求手続きを行う方)の住所、氏名を記載して、①で購入した140円切手を貼る。裏面は無記入でよい。
定形型封筒の表面に請求する市町村役場の住所、市町村役場名、担当課を記入して、①で購入した残りの140円切手を貼る。
裏面に自分(請求手続きを行う方)の住所、氏名を記入する。

【郵送する提出書類】
- 定額小為替1000円×3枚(住民票の請求をした方は1000円×2枚と戻ってきた円分を同封)
- 戸籍証明書等郵請求書(個人用)+委任状(必要な方のみ)
- 本人確認書類のコピー
- 返信用封筒

1〜2週間前後で市町村役場から戸籍謄本等と定額小為替のお釣りが郵送される。
下関市で戸籍謄本を取得した後は、その戸籍に記載されている「従前戸籍」を確認します。
従前戸籍とは、下関市に本籍を置く前に、戸籍が置かれていた市区町村役場のことです。
この従前戸籍に記載されている市区町村役場が、次に戸籍を請求する先となります。
このように、取得した戸籍 → 記載されている従前戸籍 → 次の市区町村役場という流れを繰り返しながら、順番に戸籍を取得していきます。
そして、被相続人が出生した時点の戸籍まで遡って取得できれば、戸籍の収集は完了です。
まとめ

今回は、相続手続きを進めるために最初に行うべき「基礎調査」について解説しました。
相続人を確定させるためには、被相続人が出生してから死亡するまでの戸籍をすべて収集することが必要です。
被相続人の過去の本籍地がある市区町村役場へ、戸籍に記載されている従前戸籍をたどりながら請求を繰り返すことで、必要な戸籍を順に取得していくことができます。
こうして取得した戸籍をもとに相続人を確認すれば、相続人の確定は完了となります。
この作業は、一度流れを理解してしまえば難しいものではありませんが、初めて行う場合は、思った以上に時間や手間がかかることも少なくありません。
不明な点があれば、市区町村役場の担当職員に電話で問い合わせることで、丁寧に説明してもらうことも可能です。
それでも
「手続きが難しい」
「忙しくて時間が取れない」
「戸籍の収集に不安がある」
という場合には、行政書士などの専門家に依頼することも一つの選択肢です。
お近くの行政書士へ相談し、ご自身に合った方法で相続手続きを進めていきましょう。
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