はじめに|「不動産は早めに贈与した方がいい」と思っていませんか?
相続や遺言のご相談を受けていると、次のような声をよく耳にします。
「自宅は生前に子どもへ贈与した方がいいですよね?」
「不動産は早めに名義を変えた方が、相続が楽だと聞きました」
確かに、不動産は相続の場面で話し合いが難しくなりやすい財産です。そのため、「元気なうちに生前贈与しておいた方が安心」と考える方も少なくありません。
しかし実務の現場では、
- 贈与税や登記費用の負担が想像以上に大きかった
- 住まいや生活に支障が出てしまった
- 結局、遺言で決めておけばよかった
という結果になるケースも多く見られます。
不動産は、金額が大きく、一度動かすと簡単には元に戻せない財産です。だからこそ、「なんとなく」ではなく、判断の軸を整理して考えることが重要になります。
結論|不動産は「原則は相続」、生前贈与は例外的な選択です
結論からお伝えします。
不動産については、多くのケースで「生前贈与せず、相続まで待つ」方が現実的です。
生前贈与が向いているのは、
- 今すぐ名義を移す必要がある
- 将来の相続で確実にトラブルになる事情がある
といった、明確な理由がある場合に限られます。
理由がはっきりしないまま生前贈与をすると、税金・生活・家族関係の面で、かえって負担が増えてしまうこともあります。
では、なぜ不動産の判断は難しく、間違えやすいのでしょうか。ここから、判断を誤りやすい3つの視点を整理していきます。
視点①|税金と費用を「不動産目線」で考えているか
不動産を移すときには、必ず税金や諸費用が発生します。この違いを正しく理解していないと、判断を誤りやすくなります。
生前贈与の場合
- 贈与税がかかる(原則として相続税より税率が高い)
- 不動産取得税がかかる
- 登録免許税の税率も高い
不動産は評価額が高いため、年間110万円の基礎控除内に収まるケースはほとんどありません。
相続の場合
- 相続税がかかる(基礎控除が大きい)
- 自宅は小規模宅地等の特例により、評価額が最大80%減額されることがある
- 不動産取得税はかからない
- 登録免許税も生前贈与より低い
税金と費用だけを見ると、不動産は相続で引き継いだ方が有利になるケースが多いのが実情です。
視点②|「今、確実に渡す必要」が本当にあるか
次に考えるべきは、なぜ今、生前贈与をしなければならないのかという点です。
生前贈与が向いているケース
- 子どもがすでに住んでおり、住宅ローンや建替えの関係で名義変更が必要
- 事業承継などで、名義を一本化しないと支障が出る
- 相続関係が複雑で、特定の人に確実に渡したい
このように、「今でなければ意味がない理由」がある場合は、生前贈与を検討する余地があります。
相続が向いているケース
- 不動産の名義人がそのまま住み続けている
- 将来の家族状況がまだ変わる可能性がある
- 遺言で分け方を整理できそうな場合
理由がはっきりしないままの生前贈与は、後から「やらなければよかった」と感じる原因になりやすくなります。
視点③|贈与後の「生活と住まい」を想定できているか
不動産の生前贈与で、最も見落とされがちなのが生活への影響です。
生前贈与をすると、
- 名義を移した不動産は、原則として取り戻せない
- 将来、売却して生活資金や介護費に充てることができなくなる
- 施設入所や医療費が必要になった場合の選択肢が減る
また、自宅を子どもに贈与して住み続ける場合でも、
- 受贈者との関係が悪化すると住み続けられなくなる
- 税務上、名義だけの贈与として指摘されるリスク
といった問題が生じることがあります。
老後の生活資金と住まいの確保は、不動産対策よりも優先すべき事項です。
実務で多い結論|不動産は「遺言で相続」が一番バランスがよい
実務の現場では、
- 不動産は生前贈与しない
- 相続(亡くなる)まで本人が所有し続ける
- 遺言で「誰にどう渡すか」を明確にする
という形に落ち着くケースが非常に多いです。
遺言があれば、
- 不動産の帰属が明確になる
- 共有名義を避けやすい
- 家族が判断に迷わなくて済む
といった大きなメリットがあります。
まとめ|不動産は「焦って動かない」ことが最大の対策
不動産について迷ったときの判断軸は、次の3点です。
- 税金・費用面で本当に得か
- 今、名義を移す明確な理由があるか
- 贈与後の生活や住まいに影響はないか
これらをクリアできない場合は、生前贈与は選ばず、相続+遺言で整理するという判断が、安全で現実的です。
不動産の相続対策に迷っている方へ
不動産は、動かしてから後悔しても戻せない財産です。
だからこそ、
- 生前贈与にするか
- 相続まで待つか
- 遺言でどう整理するか
をまとめて考えることが重要です。
「うちはどちらが現実的なのか分からない」そう感じた段階でのご相談が、結果的に一番リスクを減らします。
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