相続財産になるもの・ならないもの|法律の根拠から解説

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はじめに|「全部が相続される」わけではない

相続が発生すると、「親の持っていたものはすべて相続財産になる」と思われがちです。

しかし、民法は相続財産の範囲を明確に定めています。

民法896条は、

相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。

と規定しています。

つまり原則は、“権利も義務もすべて承継する”という包括承継です。

ただし、例外があります。

この記事では、相続財産になるもの・ならないものを法律の根拠に照らして整理します。

① 現金・預金(相続されるもの)

■ 現金

被相続人が所有していた現金は、当然に相続財産になります。(民法896条)

自宅に保管されていた現金も含まれます。

■ 預金

銀行預金は被相続人の債権(預金返還請求権)です。

したがって、これも相続財産に含まれます。

最高裁平成28年12月19日判決により、預金は相続開始と同時に当然に分割されるものではなく、遺産分割の対象となることが明確になりました。

② 不動産

土地・建物は当然に相続財産です。

所有権(民法206条)という権利が承継されます。

相続登記をしていなくても、法律上は相続人に帰属しています。

③ 有価証券

株式・投資信託・国債などの有価証券も財産的価値を持つ権利であり、相続財産に含まれます。

株式は株主としての地位が承継されます。(会社法)

④ 動産

自動車、貴金属、美術品、家具なども動産として相続財産に含まれます。

名義変更が必要な自動車も、所有権自体は相続開始時に承継されています。

⑤ 債権

貸金返還請求権や未収金などの債権も相続財産です。

例えば、

  • 他人に貸していたお金
  • 未払いの家賃
  • 売掛金

なども承継対象です。

⑥ 負債

民法896条は「権利義務」と規定しています。

したがって、借金や保証債務も相続財産に含まれます。

  • 金融機関の借入金
  • クレジット残債
  • 連帯保証債務

などは承継されます。

この点が、相続放棄制度が存在する理由でもあります。(民法915条)

⑦ 一身専属権(相続されないもの)

民法896条ただし書きは、

被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

と規定しています。

一身専属権とは、その人だけに帰属する権利です。

例えば、

  • 生活保護受給権
  • 年金受給権(未支給分は例外的に請求可)
  • 扶養請求権
  • 資格・免許

などは相続されません。

また、離婚請求権なども一身専属的性質を持ちます。

⑧ 生命保険金

生命保険金は注意が必要です。

受取人が指定されている場合、保険金請求権は受取人固有の権利となり、相続財産には含まれません。

ただし、遺留分算定では持戻しの対象となる場合があります。

⑨ 香典・葬儀費用

■ 香典

香典は原則として喪主に帰属すると考えられています。

したがって、通常は相続財産には含まれません。

■ 葬儀費用

葬儀費用は、相続財産から当然に支出されるものではありません。

判例上、まずは喪主が負担するとされる傾向があります。

ただし、遺産分割協議の中で清算されることはあります。

⑩ その他、迷いやすいもの

■ 退職金

支給規定により、受取人固有の権利となる場合があります。

■ 損害賠償請求権

財産的損害に関する請求権は相続されます。

■ 慰謝料請求権

被相続人が生前に請求意思を表示していた場合は相続されると解されています。

まとめ|相続財産は「思っているより広い」

相続財産は、

  • 現金や不動産だけでなく
  • 債権や負債も含まれ
  • 一身専属権は除外される

という包括的な制度です。

特に負債や保証債務は見落とされやすく、後から問題になることがあります。

何が相続財産に含まれるのかを正しく理解することが、相続の第一歩です。

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