任意後見制度について
任意後見制度は、自己の判断能力が将来低下することに備えて、自分の意思で後見人を選任し、あらかじめ指定しておく制度です。法定後見制度とは異なり、任意後見制度は本人の意思を尊重し、予防的な意味合いが強い点が特徴です。
この制度は、2000年に民法が改正され、導入されました。特に高齢化社会の進行に伴い、認知症などで判断能力が衰える前に自分の生活を支えるために後見人を指名することができる点が注目されています。
本記事では、任意後見制度の概要、仕組み、メリット・デメリット、具体的な利用方法、現状の課題などについて詳しく解説します。
1. 任意後見制度の概要
1.1 任意後見制度の目的
任意後見制度の主な目的は、将来における自己の判断能力の低下を見越して、自分の意志に基づき後見人を選任し、生活面や財産面の支援を受けることです。
これにより、本人がまだ判断能力がしっかりしているうちに、必要な支援を受ける準備をしておくことができます。また、予め後見人を選ぶことで、本人が望む形で生活を送り、自己の権利を守ることができます。
任意後見制度は、以下の点で重要な意味を持ちます。
- 将来の備えとして、自己の意思で後見人を選定できる
- 自分の選択で支援を受けることができ、プライバシーや自由度が高い
- 後見人の選任過程で、親族など信頼できる人を後見人に指名することができる
1.2 任意後見制度と法定後見制度の違い
任意後見制度と法定後見制度は、いずれも後見人が本人に代わって財産管理や生活支援を行うという点で共通していますが、いくつかの重要な違いがあります。
- 後見人の選任方法
法定後見制度は、本人の判断能力が低下した後に、家庭裁判所が後見人を選任します。一方、任意後見制度は、本人がまだ元気で判断能力があるうちに、あらかじめ後見人を選ぶことができます。 - 契約の発効時期
法定後見制度は、後見開始の申し立てを行った時点で後見が始まります。任意後見制度は、本人が判断能力を喪失した後に後見が開始されるため、事前に選んだ後見人がその後見業務を行い始めます。 - 後見人の範囲と責任
任意後見制度では、後見人が具体的にどのような業務を行うかをあらかじめ本人と契約で決めることができます。これにより、本人の希望に沿った支援が受けやすくなります。
2. 任意後見制度の仕組み
2.1 任意後見契約の締結
任意後見制度を利用するためには、まず任意後見契約を締結する必要があります。
任意後見契約は、本人と後見人候補者との間で交わされる契約です。この契約は、公証人によって公正証書として作成される必要があります。公証人による公正証書作成が必須であるため、書面での契約が法的効力を持ちます。
契約内容としては、後見人が具体的にどのような権限を持つか、どのような支援を行うかなどが明記されます。任意後見契約は、以下の情報を含みます。
- 後見人の氏名
任意後見契約では、本人が信頼できる後見人を選任します。後見人は、弁護士や社会福祉士などの専門家、または親族が候補者となることがあります。 - 後見人の権限と業務内容
任意後見契約では、後見人の権限(財産管理、日常生活の法律的支援、入院の契約など)を具体的に設定できます。 - 発効条件
後見契約は、本人の判断能力が低下したと判断される段階で発効します。そのため、契約書に明記された条件に従い、裁判所に後見開始の申し立てを行います。
2.2 任意後見の開始
任意後見契約が結ばれた後、本人が判断能力を失ったときに、その契約に基づいて後見が開始されます。判断能力の低下が認められた時点で、後見契約の受任者が後見開始の申し立てを家庭裁判所に行います。家庭裁判所が、任意後見監督人の選任をすることで、受任者は任意後見人となります。
2.3 監督と報告
任意後見制度では、後見人は本人の生活や財産の管理を行いますが、任意後見監督人の監督を受けます。後見人は定期的に任意後見監督人に報告を行う義務があり、その活動が適正に行われているかどうかがチェックされます。
3. 任意後見制度のメリット
3.1 自己決定の尊重
任意後見制度の最大のメリットは、自己決定権の尊重です。本人が元気なうちに後見人を選ぶことができ、将来の支援に関する具体的な希望を契約に反映させることができます。これにより、後見人に任せる内容や権限が、本人の意思に沿った形になります。
3.2 親族や信頼できる人を後見人に選べる
任意後見制度では、後見人を自分で選ぶことができるため、信頼できる親族や専門家を選任することが可能です。これにより、後見人が不正を行うリスクを減少させ、本人が安心して生活できるように支援を受けることができます。
3.3 柔軟な支援内容の設定
任意後見契約では、後見人がどのような業務を行うかを事前に決めることができます。例えば、財産の管理だけでなく、医療や福祉サービスの手配、日常生活のサポートなども契約で明確に規定できます。この柔軟性により、本人の生活状況に合わせた支援が可能となります。
4. 任意後見制度のデメリット
4.1 契約時の手間と費用
任意後見契約を締結するには、公証人による公正証書を作成しなければならず、手間と費用がかかります。契約内容によっては、数万円から十数万円の費用が必要になることもあります。
4.2 後見開始までの時間
任意後見制度は、本人が判断能力を喪失することを前提にしています。そのため、後見が実際に開始されるまでに時間がかかる場合があります。この間、本人が判断能力を失ってから後見人が業務を開始するまでに、ある程度の期間が空くことになります。
4.3 後見人の信頼性
後見人が誰であっても、信頼できる人物であることが前提ですが、親族や信頼している人が後見人に選ばれた場合でも、後見人が適切に業務を遂行しない可能性もあります。特に後見人が財産管理を担当する場合、不正使用のリスクを避けるためには、適切な監視体制が必要です。
5. 現状と今後の展望
任意後見制度は、主に高齢者を中心に利用が進んでいますが、制度の利用促進にはまだ課題が残されています。
例えば、契約に関する理解が不十分であることや、手続きが面倒であることから、制度の利用者が限られている現状があります。
今後、任意後見制度の普及を進めるためには、制度の簡便化やコスト削減、広報活動の強化が求められます。
また、信頼できる後見人の選定や監督体制の充実も重要です。社会全体で高齢者や障害者を支える仕組みが整備されることで、任意後見制度がより効果的に活用されることが期待されています。
6.まとめ
任意後見制度は、自己決定権を尊重し、将来の生活を支えるための有効な手段です。制度を活用することで、本人が望む形で支援を受け、安心して生活を続けることができます。
しかし、利用に際しては、契約手続きや費用、後見人の選定などの点で慎重な対応が求められます。将来的には、より多くの人々が制度を利用できるよう、制度の普及と改善が進むことが期待されます。
銀行の相続手続き代行サービス
当事務所では北九州市門司区を中心に銀行の相続手続きのサポートをしております。
『相続が分からない』『手続きが難しくてできない』『相続手続きをいち早く完了したい』といったお悩みがある方は、お気軽に銀行の相続手続き専門の当事務所までお問い合わせください。
必要書類の準備から窓口での手続きを迅速に行い、お客様のご不安を解決します。
また、今回のような認知症等による成年後見制度のご相談についても承っておりますのでお気軽にご相談ください。
お問い合わせは、お電話または下記のお問い合わせフォームよりお待ちしております。
公式LINEのチャットでのご相談は無料となっていますので、是非ご活用くださいませ。
ご依頼の流れ
お電話・下記お問い合わせフォームよりお問い合わせください。
【お電話の場合】
お電話でお客様のご都合を伺わせていただき決定します。
【お問い合わせフォームの場合】
お問い合わせの内容を確認次第、こちらからご連絡させていただきます。
その際ご面談の日時や場所をお客様のご都合を伺いながら決定します。
お客様のお悩みを伺い、最善の方法でお悩みを解決できるようご提案いたします。
ご面談の内容に納得・合意頂けましたらご契約の手続きをします。
原則、着手金として基本料金をお預かりしております。
(指定銀行口座へお振込み)
残額は業務完了後にお支払い頂きます。
(10万円未満の場合は全額を基本料として頂戴しております。)
着手金のお振込みの確認 若しくは委任契約の合意ができ次第、業務を開始します。
定期的に業務の進行状況等のご連絡をいたします。
業務が全て完了しましたらその旨のご連絡をいたします。
最終的に弊所が行った業務内容についてご説明し書類等の納品をします。
手数料の合計と実費等の精算をしまして3日以内に完了金をお支払いして頂きます。
お問い合わせフォーム
お電話もしくは下記お問い合わせフォームよりご連絡をお願いいたします。
LINEではトーク画面のメッセージからでもご相談可能です。
『相談希望』とメッセージください。