【相続預金の分け方】法的基準から実務手順まで徹底解説|北九州の行政書士が解説

目次

1. はじめに 相続預金の分割方法について

相続時に預金を分けることは、相続手続きの中でも特に注意が必要な部分です。

預金が複数の金融機関に分かれている場合や、故人がどの口座にどれだけの金額を残していたのかが不明確な場合もあります。また、相続人間で預金の分け方に意見の相違が生じることも珍しくありません。預金の分け方を決める際には、法的な枠組みを理解し、円滑に分割できるように手続きを進めることが求められます。

本記事では、相続預金の分け方について、法的基準、実務的な手順、注意すべきポイントを解説します。

2. 相続預金の基本的な取り決め

2.1. 相続財産としての預金

相続財産とは、故人が亡くなった時点で所有していたすべての財産を指します。

これには、不動産、現金、預金、株式、債券、保険金などが含まれます。預金は現金と同様に相続財産として取り扱われ、相続人はその預金を法定相続分に基づいて分けることになります。

預金の分け方は、遺言書または遺産分割協議を経て決定されます。遺産分割協議は、故人の預金をどのように分けるかを相続人全員で決めるための手続きで、合意が得られた場合に分割が実行されます。

2.2. 法定相続分と遺言書の影響

相続人が預金をどのように分けるかは、遺言書の有無によって異なります。

  • 遺言書:故人が遺言書を残していた場合、その内容に従って預金の分割を行います。遺言書が有効な場合、相続人間での合意を得る必要はありませんが、遺言書に基づく分割が法定相続分を超える場合、他の相続人の遺留分を侵害している恐れがあるため遺留分侵害請求をされる可能性があります。
  • 法定相続分:亡くなった方が遺言書を作成していない場合、相続人は民法に基づいた法定相続分に従って遺産を分けることになります。例えば、配偶者と子供が相続人の場合、配偶者は2分の1、子供たちは残りの2分の1を均等に分けます(子供が1人なら子供は2分の1、子供が2人ならそれぞれ4分の1)。

遺留分については下記【4. 預金分割に影響を与える要素】で解説していますのでそちらをご覧下さい。

3. 預金分け方の基本的な考え方

3.1. 遺産分割協議

遺言書がなく相続人が複数いる場合、預金の分け方については遺産分割協議が必要です。この協議は、相続人全員の合意に基づいて進められます。遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・捺印することで、正式に分割が確定します。

遺産分割協議は、以下のような方法で行われます。

  • 預金口座の確認:最初に故人の預金口座の種類(普通預金、定期預金、外貨預金など)と残高を確認します。このためには、故人の通帳やキャッシュカードを見つけ出し、銀行に問い合わせて残高証明書を取り寄せる必要があります。
  • 分割方法の決定:相続人全員で預金の分け方を決定します。具体的には、法定相続分に基づいて預金を分ける方法、もしくは相続人間で合意した方法に従います。

3.2. 具体的な分割方法

預金の分け方には、以下のような方法があります。

  • 法定相続分による分割:相続人全員が法定相続分に従って預金を分けます。例えば、配偶者と子供が相続人であれば、配偶者が2分の1、子供が2分の1を分けることになります。
  • 相続人の事情に応じた分割:相続人の生活状況やその他の事情に配慮して、分割方法を決めることもあります。例えば、配偶者が高齢であったり、子供が何らかの理由で相続分を受け取れない場合など、柔軟に分割が行われることもあります。
  • 代償分割:預金をそのまま分割するのではなく、相続人の一人が預金を取得し、他の相続人に対してその代償として自身が所有している不動産などの代わりの物を渡す方法です。この方法は不動産等の物理的に分けることができない相続財産を取得する場合に使用することが多いので、相続預金ではあまり使われないと思います。

詳細は、【相続財産の持分割合と具体的相続分】の記事をご覧ください。

4. 預金分割に影響を与える要素

4.1. 法定相続分と遺留分

法定相続分は、相続人が法的に認められた取り分を決定する基準となりますが、相続人が受け取ることができる最低限の取り分は遺留分として保障されています。

  • 遺留分:遺言書が法定相続分に反していたり、相続人の取り分を不当に減らす内容だった場合、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます。例えば、遺言書で相続人の1人に全てを相続させる内容であった場合、他の相続人は自身の法定相続分の2分の1の金額を遺留分として請求することができます。

4.2. 生前贈与と相続分

生前贈与は、故人が生前に相続人に対して贈与した財産のことです。

生前贈与があった場合、その贈与額も相続財産に加算して分割する必要があります。特に、贈与が相続開始前3年以内に行われた場合、贈与額が相続財産に含まれることがあります。

なお、2024年1月1日よりこの期間が段階的に7年に引き上げられることとなりました。

4.3. 名義預金の取り扱い

名義預金に関しては、通常の預金とは異なる取り扱いがされます。

名義預金とは、名義だけが他人の名義で、実際の預金の管理者が故人である場合に発生する問題です。このような場合は、実際の預金の所有権を証明する必要があり、名義預金として認定された預金の分割には特別な手続きが必要です。

例えば、子供や孫に将来渡すために、子供や孫名義の通帳に振り込みをしていた場合も名義預金に該当し、故人の相続財産になる可能性がありますので、これも含めて遺産分割協議をする必要があります。

名義預金については、【これって名義預金?判断するポイント5選】の記事をご覧ください。

5. 預金分けの実務的な手順

5.1. 銀行での手続き

預金分割のためには、各銀行で相続手続きを行う必要があります。銀行では、以下の手続きを求められることが一般的です。

  • 故人の戸籍謄本の提出:故人が死亡したことを証明するために、戸籍謄本等などの書類を提出します。
  • 遺産分割協議書の提出:相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果を記した協議書を提出します。
  • 相続人全員の確認:相続人の確認のため、相続人全員の戸籍謄本や印鑑登録証明書を提出することが求められます。

5.2. 相続手続きに必要な書類

相続預金の分割手続きには、一般的に以下の書類が必要です。

  • 故人の出生してから死亡するまでの戸籍謄本等
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 遺言書(遺言書がある場合)
  • 遺言書検認済証明書(自筆証書遺言の場合)
  • 遺産分割協議書(遺言書がない場合)
  • 相続人全員の印鑑登録証明書

6. 相続税と預金分割

相続税は、故人の財産を相続する際に課せられる税金です。預金を相続する場合、その額が一定以上であれば相続税が課されます。相続税の計算には、法定相続分や遺言書に基づく分割額に応じた評価額が考慮されます。

7. 相続預金分割における注意点

7.1. 預金の一部引き出し

相続開始後、遺産分割が決定する前に預金を引き出すことは、他の相続人の権利を侵害する可能性があります。したがって、相続人全員の同意を得ることが必要です。

7.2. 相続人間のトラブル防止策

相続人間で預金の分け方を巡るトラブルを避けるためには、遺産分割協議を早期に行い、書面にまとめることが重要です。さらに、必要に応じて専門家の助言を求めることも有効です。

8. まとめ

相続預金の分け方は、法的基準に従いながら、相続人間で合意を得て行う必要があります。

遺産分割協議をしっかりと行い、必要な書類を整えることで、円滑に預金を分割することができます。また、相続税や生前贈与、名義預金といった要素も影響を与えるため、注意深く進めることが大切です。

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