はじめに|「ここまで準備しているから大丈夫」と思っていませんか?
相続や終活のご相談を受けていると、次のように話される方が少なくありません。
「葬儀費用はもう準備しています」
「通帳も長男に預けてあります」
「相続のことは、ちゃんと考えているつもりです」
特に、配偶者がすでに亡くなり、ご自身の老後や最期のことを現実的に考えている方ほど、
「もう終活はできている」
「遺言まではしなくていい」
と感じているケースが多く見られます。
しかし実務では、まさにこのタイプの方の相続で、あとから問題が起きるというケースが少なくありません。
結論|終活をしていても「遺言がなければ通らない想い」があります
結論からお伝えします。
どれだけ終活をしていても、遺言がなければ、法的にはその想いは反映されません。
- 通帳を預けている
- 葬儀費用を準備している
- 面倒を見てくれる子に多く渡したい
これらはすべて、気持ちとしては自然でも、法律上は別問題です。
その結果、「一番守りたかった人が、一番困る」という状況が起きてしまうことがあります。
事例|終活は万全だと思っていた75歳女性のケース
状況
- 75歳女性
- 夫はすでに他界
- 推定相続人:長男・次男の2人
- 長男が同居・介護・日常の世話を担当
この女性は、
- 自分の葬儀費用はすでに準備
- 預金通帳は長男に預けて管理してもらっている
- 「面倒を見てくれる長男に多く財産を渡したい」
- と考えており、
- ご本人としては相続も終活も、しっかり考えているつもりでした。
落とし穴①|通帳を預けていても「長男の財産」にはならない
まず大きな誤解が、
「通帳を長男に預けている=長男のもの」
という認識です。
法律上、通帳を誰が持っているかと、誰の財産かは別です。
- 名義が本人である限り
- その預金はすべて「相続財産」
として扱われます。
つまり、
葬儀費用のため
管理を任せていただけ
という事情があっても、相続が始まれば、全額が遺産分割の対象になります。
落とし穴②|葬儀費用のためでも「自由に使っていい」わけではない
「葬儀費用として使ってほしいから」という目的があっても、
- どこまでが葬儀費用か
- いくら使ってよいのか
が明確でなければ、あとから他の相続人とのトラブルになる可能性があります。
実際には、
- 次男から「なぜそんなに使ったのか」、「本当に葬儀費用だけなのか」
と疑問を持たれ、長男が説明を求められるケースも少なくありません。
落とし穴③|法律的には「弟の主張」が通る構造
遺言がない場合、相続は法定相続分が基準になります。
このケースでは、
- 相続人は長男・次男の2人
- 原則として、相続分は 2分の1ずつ
です。
たとえ、
- 長男が介護をしていた
- 長男が通帳を管理していた
- 母が「長男に多く渡したい」と考えていた
としても、遺言がなければ、弟(次男)の主張は法的に正当です。
結果|「遺言がないことで、長男が一番困る」
このようなケースでは、
- 長男は「母の気持ちを分かってほしい」と思う
- 次男は「法律どおりに分けてほしい」と主張する
という構図になりやすく、
結果として、
- 兄弟関係がぎくしゃくする
- 長男が精神的に追い詰められる
- 手続きが進まなくなる
という事態に発展することがあります。
母を支えてきた長男が、相続で一番苦しい立場になるこれは、決して珍しい話ではありません。
なぜ「終活をしている人」ほど、落とし穴にはまりやすいのか
終活をしている方ほど、
- 自分なりに準備している
- 家族も分かってくれているはず
- わざわざ遺言を書かなくても大丈夫
と感じやすい傾向があります。
しかし相続は、「分かっているはず」では処理できない手続きです。
最終的に判断されるのは、
- 書面に残っているか
- 法律上有効か
という点です。
解決策|「想い」を守るには、公正証書遺言が必要です
このケースで、長男を守り、家族関係を守るために最も有効なのが公正証書遺言です。
遺言があれば、
- 長男に多く渡したい理由
- 葬儀費用の考え方
- 財産の分け方
を、法的に有効な形で残すことができます。
また、公正証書遺言であれば、
- 紛失・改ざんの心配がない
- 家庭裁判所の検認が不要
- 相続手続きがスムーズ
というメリットもあります。
まとめ|「準備しているから大丈夫」な相続ほど、最後の一手が重要です
- 通帳を預けている
- 葬儀費用を準備している
- 面倒を見てくれる子がいる
これらは、立派な終活です。
しかし、その想いを相続で確実に反映させるためには、遺言が欠かせません。
特に、
- 特定の子に多く渡したい
- 兄弟間で差が出る可能性がある
場合は、遺言がないことで、守りたい人を逆に苦しめてしまうという結果になりかねません。
終活と相続を「最後まで」整えたい方へ
行政書士74事務所では、
- 終活の内容整理
- 今の準備で足りているかの確認
- 想いをどう遺言に落とすか
- 公正証書遺言の作成サポート
まで、実務目線で一緒に整理しています。
「遺言までは必要ないと思っていた」その段階からのご相談で構いません。
想いがきちんと伝わる形で残せているか、一度、整理してみませんか。


