不動産は生前贈与すべき?相続まで待つべき?判断を誤りやすい3つの視点

目次

はじめに|「不動産は早めに贈与した方がいい」と思っていませんか?

相続や遺言のご相談を受けていると、次のような声をよく耳にします。

「自宅は生前に子どもへ贈与した方がいいですよね?」
「不動産は早めに名義を変えた方が、相続が楽だと聞きました」

確かに、不動産は相続の場面で話し合いが難しくなりやすい財産です。そのため、「元気なうちに生前贈与しておいた方が安心」と考える方も少なくありません。

しかし実務の現場では、

  • 贈与税や登記費用の負担が想像以上に大きかった
  • 住まいや生活に支障が出てしまった
  • 結局、遺言で決めておけばよかった

という結果になるケースも多く見られます。

不動産は、金額が大きく、一度動かすと簡単には元に戻せない財産です。だからこそ、「なんとなく」ではなく、判断の軸を整理して考えることが重要になります。

結論|不動産は「原則は相続」、生前贈与は例外的な選択です

結論からお伝えします。

不動産については、多くのケースで「生前贈与せず、相続まで待つ」方が現実的です。

生前贈与が向いているのは、

  • 今すぐ名義を移す必要がある
  • 将来の相続で確実にトラブルになる事情がある

といった、明確な理由がある場合に限られます。

理由がはっきりしないまま生前贈与をすると、税金・生活・家族関係の面で、かえって負担が増えてしまうこともあります。

では、なぜ不動産の判断は難しく、間違えやすいのでしょうか。ここから、判断を誤りやすい3つの視点を整理していきます。

視点①|税金と費用を「不動産目線」で考えているか

不動産を移すときには、必ず税金や諸費用が発生します。この違いを正しく理解していないと、判断を誤りやすくなります。

生前贈与の場合

  • 贈与税がかかる(原則として相続税より税率が高い)
  • 不動産取得税がかかる
  • 登録免許税の税率も高い

不動産は評価額が高いため、年間110万円の基礎控除内に収まるケースはほとんどありません。

相続の場合

  • 相続税がかかる(基礎控除が大きい)
  • 自宅は小規模宅地等の特例により、評価額が最大80%減額されることがある
  • 不動産取得税はかからない
  • 登録免許税も生前贈与より低い

税金と費用だけを見ると、不動産は相続で引き継いだ方が有利になるケースが多いのが実情です。

視点②|「今、確実に渡す必要」が本当にあるか

次に考えるべきは、なぜ今、生前贈与をしなければならないのかという点です。

生前贈与が向いているケース

  • 子どもがすでに住んでおり、住宅ローンや建替えの関係で名義変更が必要
  • 事業承継などで、名義を一本化しないと支障が出る
  • 相続関係が複雑で、特定の人に確実に渡したい

このように、「今でなければ意味がない理由」がある場合は、生前贈与を検討する余地があります。

相続が向いているケース

  • 不動産の名義人がそのまま住み続けている
  • 将来の家族状況がまだ変わる可能性がある
  • 遺言で分け方を整理できそうな場合

理由がはっきりしないままの生前贈与は、後から「やらなければよかった」と感じる原因になりやすくなります。

視点③|贈与後の「生活と住まい」を想定できているか

不動産の生前贈与で、最も見落とされがちなのが生活への影響です。

生前贈与をすると、

  • 名義を移した不動産は、原則として取り戻せない
  • 将来、売却して生活資金や介護費に充てることができなくなる
  • 施設入所や医療費が必要になった場合の選択肢が減る

また、自宅を子どもに贈与して住み続ける場合でも、

  • 受贈者との関係が悪化すると住み続けられなくなる
  • 税務上、名義だけの贈与として指摘されるリスク

といった問題が生じることがあります。

老後の生活資金と住まいの確保は、不動産対策よりも優先すべき事項です。

実務で多い結論|不動産は「遺言で相続」が一番バランスがよい

実務の現場では、

  • 不動産は生前贈与しない
  • 相続(亡くなる)まで本人が所有し続ける
  • 遺言で「誰にどう渡すか」を明確にする

という形に落ち着くケースが非常に多いです。

遺言があれば、

  • 不動産の帰属が明確になる
  • 共有名義を避けやすい
  • 家族が判断に迷わなくて済む

といった大きなメリットがあります。

まとめ|不動産は「焦って動かない」ことが最大の対策

不動産について迷ったときの判断軸は、次の3点です。

  • 税金・費用面で本当に得か
  • 今、名義を移す明確な理由があるか
  • 贈与後の生活や住まいに影響はないか

これらをクリアできない場合は、生前贈与は選ばず、相続+遺言で整理するという判断が、安全で現実的です。

不動産の相続対策に迷っている方へ

不動産は、動かしてから後悔しても戻せない財産です。

だからこそ、

  • 生前贈与にするか
  • 相続まで待つか
  • 遺言でどう整理するか

をまとめて考えることが重要です。

「うちはどちらが現実的なのか分からない」そう感じた段階でのご相談が、結果的に一番リスクを減らします。

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