はじめに
相続はある日突然訪れます。
しかし、問題は「相続が始まること」ではなく、「その後、いかに複雑な現実が待っているか」です。
今回ご紹介する事例は、被相続人(夫)の相続手続き中に、相続人である妻が急逝するという、まさに“二重の相続”が重なった実例です。
不動産には抵当権付きの住宅ローンが残っており、相続手続きには銀行での名義変更や新たな借入契約が必要でした。
平穏な家庭に突如訪れた試練、8ヶ月にもおよぶ長い手続きの末に、ようやく相続を終えた家族のストーリーをご紹介します。
第一章 突然の別れと、残された家族
この事例は、ある老年夫婦とその2人の子どもたちの家庭に訪れた突然の別れから始まります。
家族の柱であった父親(被相続人)が急逝。
残されたのは、妻のAさんと、独立して暮らす2人の子どもBさんとCさん。法定相続人はこの3人でした。
父親の死後、家族は悲しみに包まれながらも、現実的な課題に直面します。
それが「相続手続き」でした。
父が残した主な財産は、家族が住んでいた住宅と、その住宅に付随する銀行の住宅ローン。
そして、多少の預金と生活用品。問題は、その住宅に抵当権が設定されており、ローン残債が数千万円残っていたことでした。
第二章 銀行の指摘「ローン名義を変更しなければ、手続きは進みません」
相続人3人は早速、銀行に相続手続きを申し出ます。預金の名義変更や不動産の相続登記を進めようとしたところ、銀行の担当者から次のような説明を受けました。
「この住宅には抵当権が設定されており、ローンの債務者は被相続人です。よって、どなたかがこのローンを引き継がなければ、相続手続きを完了させることはできません。」
つまり、「相続人がローン(債務)を引き継ぐ」ことが、預金の解約や不動産の名義変更の前提条件とされていたのです。
これにより、単なる相続の手続きではなく、「借金の承継」が新たな問題として浮上しました。
この段階で、Aさん(妻)と子どもたちは話し合いの末、長男のBさんがローンを引き継ぐ形で進めることに決定。
銀行に申し出を行い、借入承継の手続きを進めることになります。
第三章 思わぬ悲劇、妻の急逝
しかし、手続きの途中で想定外の事態が起きます。
なんと、相続人の1人である妻Aさんが病気で急逝してしまったのです。
これにより、父親の相続手続きは大きな壁にぶつかります。
Aさんの死亡により、彼女の相続権は消滅し、その相続分は今度はBさんとCさんが「再び」相続人として承継することになる、いわゆる「二次相続」が発生したのです。
また、Aさん名義で進めていた一部の手続き(書類の提出や印鑑証明の用意など)も無効になり、全体の流れが一度中断されてしまうことになりました。
第四章 二重の相続と、再スタート
妻Aさんの死去により、父親の相続手続きと並行して、Aさんの遺産分割協議も必要となりました。
子どもたちは、両親が立て続けに亡くなったことで精神的にも大きな負担を抱えながら、法的な対応を迫られます。
その後、以下のような流れで手続きが進行しました。
- 被相続人(父)の遺産分割協議書を再作成
→ 妻の相続分を、子ども2人で引き継ぐ内容に修正。(行政書士(当事務所)に依頼) - Aさんの相続登記・預金解約手続き
→ 新たな被相続人となったAさんについて、子ども2人が相続人となり、名義変更等を行う。(行政書士(当事務所)に依頼) - Bさんによる住宅ローンの再審査と契約締結
→ 銀行からは、名義変更というより「新たな借入契約」として扱われた。 - 抵当権の再設定と登記変更
→ 法務局と銀行の間で何度も調整が必要だった。(司法書士に依頼)
この間にも、必要書類の取り寄せや訂正、行政手続きの予約待ち、書類の不備による再提出などが重なり、当初1〜2ヶ月で終わると見られていた相続手続きは最終的に8ヶ月かかることになりました。
第五章 すべてが終わった後に残ったもの
8ヶ月の長い相続手続きがようやく終わったとき、BさんとCさんは安堵とともに、深い疲れを感じていたといいます。
「書類の不備一つで1週間、1ヶ月と手続きが遅れるんです。ましてや、手続き中に相続人が亡くなると、すべてやり直しになる。父が家を残してくれたのはありがたいけれど、正直ここまで大変とは思いませんでした。」
こう語るBさんの表情には、苦労を乗り越えた自信と、依頼した専門家への感謝がにじんでいました。
この事例から学ぶ教訓
この相続事例から、私たちはいくつもの教訓を得ることができます。
1. 借金(ローン)付き不動産の相続は特に注意が必要
資産と同時に負債も引き継ぐのが相続です。
不動産にローンや抵当権がついている場合は、相続人が新たな契約者となる必要があり、銀行の審査を受けることになります。
また、団体信用生命保険に加入している場合でも、保証期間は、満80歳の誕生日の属する月の末日までとなっておりますので、保証期間を超える返済計画をしている場合は、注意が必要です。
2. 相続手続き中に相続人が亡くなると、手続きは一からやり直し
「中断ではなく、再構築」です。
進行中の遺産分割協議書、印鑑証明、登記手続きなど、すべて見直す必要があります。
3. 早期の専門家への相談が負担を軽減する
行政書士などの専門家に早期に相談していれば、二次相続の発生にも迅速に対応でき、精神的・時間的な負担を軽減できます。
まとめ
相続は「誰が何をもらうか」の問題にとどまりません。
相続人の状況が変われば、たとえ進行中の手続きであっても大きくやり直しが必要になることがあります。
今回のように、住宅ローンや抵当権が絡み、さらに相続人が亡くなるという複合的なケースでは、相続は一気に複雑化します。
相続が「争族」にならないように。
そして、残された家族が困らないように。
生前からの情報整理と、相続発生後の冷静な対応が、何よりも大切だということを、今回の事例は私たちに教えてくれています。
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