【相続事例】北九州 相続した債権が時効消滅していたら?

先日、親が亡くなり金銭債権(亡くなった親が誰かに貸していたお金を回収する権利)を相続しました。

この承継した金銭債権を回収しようとしたら債務者(親からお金を借りた人)に時効を主張され回収できませんでした。

金銭債権を相続した相続人である私は泣き寝入りしないといけないのでしょうか?

目次

具体的な例

分かりやすく具体例を上げて説明します。

Aさんが亡くなり、相続人は子供のB・C・Dさんの3人となりました。

Aさんの相続財産は、預貯金が600万円、有価証券(株式)が600万円、金銭債権が600万円の合計1800万円でした。

相続人の3人は遺産分割でBさんが預貯金、Cさんが有価証券(株式)、Dさんが金銭債権を相続によって取得する合意をしました。

しかし、Dさんが親からお金を借りていたEさんにお金を返してもらおうと請求するとすでに時効を迎えているからと主張されて債権の回収ができませんでした。

Bさん、Cさんはそれぞれ600万円ずつ相続したのにDさんは0円となってしまいました。

遺産分割協議で署名捺印をしたので、Dさんはこの合意した遺産分割の通りのままの回収できない債権のみの相続となってしまうのかという問題です。

法律上の取り扱い

可分債権

可分債権とは遺産分割をしなくても法律上当然に相続分に従って取得できる債権です。

金銭債権はこの可分債権に該当します。

この可分債権は亡くなった時に相続人に法定相続分で分割されるので遺産分割協議の対象とはされていません。

ですが今回のように相続人全員で合意することによって遺産分割協議の対象とすることもできます。

共同相続人の担保責任

民法911条は『各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。』と定めています。

これは相続人間の公平を図るために設けられているもので、相続した権利に不適合があれば他の相続人は担保する責任がありますよということです。

法律上は先に可分債権として共有しており、その後遺産分割協議をして権利を移転しているので、可分債権を共有した他の相続人は相互に権利及び物に関して不適合のないもの(遺産)を移転し合う義務があるという考え方になります。

各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。

民法第911条-wikibooks

他の相続人に担保してもらえる

今回の例をもとにお伝えすると、時効消滅という不適合な事由が存在していた金銭債権を相続したDさんはBさんとCさんに担保してもらうことができます。

具体的にはAさんの相続財産の合計は当初1800万円でしたが、実際には預貯金が600万円、有価証券(株式)600万円、金銭債権0円(時効消滅)でしたので合計は1200万円です。

この1200万円を相続分(3分の1)で分割すると400万円になりますので、Bさんは相続した預貯金の600万円のうち200万円をDさんへ、Cさんは相続した有価証券(株式)600万円のうち200万円をDさんへ支払うことで相続人間で公平な相続をすることができます。

よって相続人のDさんは他の相続人に遺産分割協議のやり直しを求めることができます。

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今回のような遺産分割協議のやり直しがしたい場合は相続人全員の合意があれば可能です。

遺産分割協議書をそのままにしておくと後からトラブルに発展してしまったり、第三者が見たときに実際は支払う権利のない税金を納めないといけなくなる恐れも出てきますので早急に修正することが重要です。

担保責任があるからといって当たり前かのように他の相続人にけしかけるとトラブルになり相続するまでに時間や余計な費用などの負担を負うことになりかねませんので、打診する際は慎重に伝えるようにしましょう。

また遺産分割協議書は専門家が作成することで法律の型にハマったしっかりとしたものを作成することが可能ですのでリスクの多い相続トラブルの防止に繋がります。

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