はじめに
「長男がずっと面倒を見てくれているから、預金はもう渡しているんです」
この話、実はかなり多いです。
特に、おひとりになられたお母様から。
夫はすでに亡くなっている。
子どもは2人。
長男は病院の付き添いもしてくれる。
買い物も来てくれる。
でも次男はほとんど顔を出さない。
そうなると、気持ちは自然と長男に向くんですよね。
「自分が亡くなった後に困らないように」
「世話になっているから」
そう思って、まとまった預金を長男に渡している。
一見、しっかり終活しているように見える。
ただ…法律上は、少し注意が必要です。
実際、このケースは相続開始後にかなり揉めやすい。
今日はその理由を、民法の考え方も含めて、実務目線でお話しします。
結論
長男に先に預金を渡していても、
思った通りに相続できるとは限りません。
なぜなら、
・生前に渡すと「贈与」になる可能性がある
・特別受益として扱われる可能性がある
・結果的に法定相続分で調整される可能性がある
つまり、「もう渡しているから安心」が、そのまま通用しないことがある。
個人的には、このケースは“気持ちと法律がズレやすい代表例”だと思っています。
「もう渡している」は法律上どうなるのか
まず前提として、生前にお金を渡すと、法律上は“贈与”として扱われる可能性があります。
つまり、「相続前に財産を移転している」という状態。
ここで問題になるのが贈与税。
年間110万円を超える場合、原則として贈与税の対象になる可能性があります。
ただ、ご本人としては
「相続対策のつもりだった」
なんですよね。
ここが最初のズレ。
感覚では“相続の前渡し”。
でも法律上は“贈与”。
この違い、かなり重要です。
面倒を見てくれた長男に多く渡したい気持ち
ここは本当に自然な感情だと思います。
実際、介護や通院の付き添い。
日常のサポート。
かなり負担が大きい。
一方で、次男はほとんど関わっていない。
そうなると、「長男に多く残したい」と考えるのは当然です。
ただ、相続は感情だけでは進まない。
ここが難しいところなんですよね。
特別受益という考え方
ここで出てくるのが「特別受益」。
民法903条の考え方です。
簡単に言うと、
“特定の相続人だけが生前に多く財産を受け取っていた場合、相続時に調整する”という制度。
つまり、
「もう長男に渡しているなら、その分を考慮して相続分を計算しましょう」という考え方。
ここがかなり重要。
持ち戻し計算が発生する可能性
特別受益になると、「持ち戻し」という考え方が出てきます。
一度渡した財産を、相続財産に戻したものとして計算する。
例えば、
相続財産が1000万円。
長男が生前に500万円受け取っていた。
すると、1500万円ある前提で法定相続分を計算する可能性がある。
長男250万円、次男750万円を相続する。(長男はすでに500万円贈与でもらっているため)
結果として、
「思ったより長男がもらえない」
こういう状況になる。
ここ、かなり誤解されやすいです。
「もう渡したから大丈夫」が危ない理由
ご本人としては、
「もう長男に渡しているから安心」
この感覚なんですよね。
ただ、法律上はそのまま確定しない。
特別受益として問題になる。
そして、次男側から主張される。
ここで初めて揉める。
実務でも、この流れかなり多いです。
3年以内(将来的には7年)の問題
さらに注意したいのが、相続開始前の贈与。
現在、相続税の制度では、死亡前一定期間の贈与が相続財産に加算される考え方があります。
現行制度では3年。
今後は段階的に7年へ延長。
つまり、
「亡くなる直前に渡したから整理できる」という単純な話ではない。
ここもかなり重要なポイントです。
北九州で実際に多いケース
北九州でも、このパターンは本当に多いです。
長男が近くに住んでいる。
面倒を見ている。
そして、通帳を預けている。
あるいは、まとまったお金を移している。
ただ、相続開始後に次男が内容を知る。
ここで空気が変わる。
「聞いていない」
「それは不公平では?」
この流れ、かなり現実的です。
解決策は遺言
ではどうするべきか。
ここで重要なのが遺言。
例えば、
「長男に相続させる」
この意思を明確に残す。
さらに、
“持ち戻し免除”の意思を記載する。
これは民法903条3項の考え方。
つまり、
「この生前贈与は相続時に調整しないでほしい」という意思表示です。
ここをしっかり残しておく。
かなり重要になります。
ただし遺留分には注意
ただ、ここも万能ではありません。
兄弟ではなく“子ども同士”の相続の場合、遺留分があります。
つまり、最低限の取り分を請求される可能性がある。
ここを無視すると、また揉めやすい。
だからこそ、
“気持ちだけ”ではなく、“法律に沿った整理”が必要になる。
「面倒を見てくれた」が伝わるとは限らない
個人的に感じるのは、
介護やサポートの苦労って、意外と周囲に伝わっていないことが多い。
やっている本人は当然のように頑張っている。
でも他の相続人からは見えにくい。
だからこそ、後から「なぜそんなに渡しているのか」となる。
ここが難しいところです。
まとめ
長男に預金を渡しているから安心。
実は、そう単純ではありません。
贈与税。
特別受益。
持ち戻し。
こういった法律上の問題が出てくる可能性がある。
そして結果的に、
思った通りの相続にならないこともある。
だからこそ重要なのが、遺言。
特に、
「誰にどう残したいのか」
「持ち戻しをどう考えるのか」
ここを整理しておくこと。
個人的には、
“気持ちを法律に変える作業”が終活ではかなり大事だと思っています。
北九州で終活・相続対策にお悩みの方へ
「面倒を見てくれている子に、しっかり残したい」
そのお気持ち、本当によく分かります。
ただ、気持ちだけでは整理しきれないのが相続です。
行政書士74事務所では、北九州市・下関市を中心に、
遺言作成や生前贈与を含めた終活サポートを行っています。
いきなりご依頼という形でなくても大丈夫です。
ただ、早めに整理しておくことで、将来のトラブルを防げるケースは本当に多い。
少しでも気になっているなら、そのタイミングで。
個人的には、その確認がかなり大事だと思っています。


